2010.06.14

ストレスのお話

先日、テレビで聖路加国際病院理事長・日野原重明先生が「ストレスとは?」という質問に興味深いお話をされていました。それは、「ストレスとは元々 の意味は、上から重いものが乗っかって、金属や棒が曲がっている状態なんですよ。ストレスにも良いストレスと悪いストレスがあって、ストレスがあるからこ そ、オリンピック選手が世界記録を出すこともできるわけです。ストレスで曲がるなら少し曲がっていようとすることも大事です。冬の竹が雪の重みで、少し曲 がっている状態がありますよね。「冬来たりなば春遠からじ」と言いますが、もうすぐ春が来る、もうすぐ楽しい春が来ると、心の中で念じながら、その曲がっ た状態を乗り越える、そんなストレスに対する心構えが大切なのです。」と。

今回はこの「ストレス」を医学的見地と心理学的見地から少し考えてみたいと思います。体調不良を訴え、病院に行くと、よく「原因はストレスです ね。」と言われることがありますよね。この場合の「ストレス」とは、自律神経のなかで交感神経を緊張させる状態をさし、体内では血管を収縮させ、血圧や心 拍数を上げ、活動(戦闘)モードにスイッチオンするように作用しています。同時に副腎からはコルチゾールというホルモンが分泌されます。このコルチゾール はステロイドとも呼ばれ、治療薬としてもよく使われています。ステロイドという薬は万能薬のようではあるのですが、副作用が多いことも有名です。糖尿病、 高血圧、肥満、消化性潰瘍、骨粗鬆症、免疫力低下による感染症、緑内障、白内障などなど、過度なストレスが体にかかり続けるとこのような様々な病気を引き 起こしてしまうということの表れなのでしょう。一方、ストレスに対して抗うホルモンもあり、DHEA(デハイドロエピアンドロステロン)が代表で、これも さきほどの副腎から分泌されます。ただこのホルモンは20代以降徐々に減少することも知られ、年齢を重ねるということは、医学的に言うとストレスに対して 段々と弱くなるといえそうです。

次に、心理的側面から見てみましょう。人はストレスを回避するためにさまざまな策を講じる心の働きがあるそうです。心理学用語の中に、「防衛機制」 といわれ、すぐには受け入れられない危機的状況(ストレス)が起こったときに一時的な緩衝装置として働き、この「防衛機制」の助けを借りて、困難な場面を 乗り越えることができるといいます。たとえば、自分自身が受け入れられない感情や記憶をなかったことにしたり(抑圧)、自分の力では目標に到達できなかっ た失望感を「あれは酸っぱいブドウだからほしくない」と強がりを言ったり(合理化)、あまりの嫌悪感から、そのままの感情が表に出るのを恐れ、無意識のう ちに全く逆のひどく丁寧な態度で接したり(反動形成)、自分自身が持つ嫌悪感を自分がもっているとは気づかず、そんなものは持っていないのだと信じ込み、 逆に相手が私を嫌っていると思いこんだり(投影)、ある認めたくない事実を、知覚したにもかかわらず認めなかったり(否認)するといった心の反応です。こ のように「防衛機制」は誰もが持っている安全装置なのですが、慢性的になって社会との折り合いがつかなくなると、現実を歪めてとらえることになり、心身の 不調(病気)につながってくると考えられています。こうした日常的なストレスに対する心理学的なメカニズムを知っておくことは、ストレスに対して、自然体 にそして冷静に対処するためにはとても大切なことだろうと思います。
そして日野原先生が言われていたように、ストレスは必ずしも悪者とは限らないようです。そこで、ストレスが寿命を延ばすという話を最後にしたいと思いま す。

養殖ウナギの稚魚は海外から空輸されてくるのですが、その際の死亡率がなんと90%。

そこで試行錯誤のうえ考えられたのが、ナマズなどの捕食者を数匹水槽の中に入れておくという方法です。ウナギにとっては哀れな話ですが、ウナギは逃 げ回り続けて20%は食べられてしまいますが、後は生きて空輸されてきたということです。

このことは人間にも言えることで、適度なストレスは生きていくうえでのスパイスになって、いきいきと生きていくためのエネルギーになります。

ストレスと上手につきあっていけるといいですね。

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2010.05.10

人生系と生命系

こんな興味深いテーマを論じた、安保 徹先生の書かれた本「40歳からの免疫力がつく生き方」(静山社文庫)に出会いました。医学的知識がないとや や難解な部分もあるかとは思いますが、皆さんにも是非読んで頂きたいと思い、今回のコラムで紹介します。

「人生系」とは一人ひとりがこの世に生まれてからの人生100年前後を意味します。一方、「生命系」とは単細胞に端を発し、現生人類に至るまでの 38億年にも及ぶ悠久の進化の歴史を指すものです。つまり、私たちはそれぞれの模様で、それぞれの人生100年を生き抜くということと同時に、38億年の 進化の後にこの現生に存在しているという、普段の生活ではあまり意識しない、とても興味深い指摘です。

そしてこの「生命系」のなかでの大きなエポックメイキングが、酸素のない地球環境でも分裂増殖することができた単細胞生物であるバクテリアから、光 合成細菌が進化出現し、地球上に酸素が発生することにあわせて、生命体のエネルギー産生系が、それまでの酸素を必要としない解糖系から、酸素を利用し産生 効率を10数倍に高めたミトコンドリア系を生み出した20億年前の出来事でしょう。このことは細胞レベルで見ると、解糖系のみが行われていた原核細胞か ら、細胞核と細胞質ミトコンドリアとの見事な融合を遂げた12億年前の真核細胞への進化を意味します。こうした細胞の進化の後、単細胞は多細胞化し、さら に機能を分化させていくことになります。そして海の中で自由に動き回る魚類から、陸に上がる両生類や爬虫類、さらには鳥類、哺乳類へと進化していったこと は皆さんもご存知のとおりです。

ここでさらに興味深い話題が、この雄大なる「生命系」の歴史を、我々の辿るわずか100年足らずの「人生系」のなかで見事に再現されているという点 です。つまり、我々の生命の起源は、まさに、分裂能を宿命付けられた解糖系細胞である男性精子と、ミトコンドリア系細胞としてもともと一定数存在する女性 卵子が受精することに始まるわけで、これこそが原核細胞から真核細胞への進化という「生命系」の再現です。そして母体のなかでは、胎生期の羊水は海水と同 等の濃度にあり、魚とよく似た形態の時期、爬虫類めいた形態の時期を経て、尾が退縮し、手足が伸びて、ついには人間らしい姿になっていくわけですから、ま さにダーウィン進化論の縮図と言えるものです。そうして、この世に生まれ落ちた時、皆さんの「人生系」が幕を開けるというわけです。

こう考えると、何気ない一日一日の歩みが大きな進化の足跡のように思えて、何か大きな意味をもっているような気がしてきませんか?人生を大切に生 きるきっかけになりそうですね。
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2010.04.08

暗示のパワー

エミール・クーエ(1857-1926)という薬剤師が、ある男から薬を売って欲しいと言われます。しかしその薬はすでに期限が切れており、しかも 色褪せていたため効力も期待できない状態にありました。クーエは「薬は売れない。」と断りますが、どうしても「その名前の薬が欲しい。」という男に対し て、責任を負わない条件で売ることにします。数日後、その男が現れ、「あの薬で病気が治った。」とお礼を述べたというのです。クーエはなぜこのようなこと が起こるのか疑問に思い、薬の効果には薬という成分の他に「必ず治るという“思い”」が働くのではないかと考え、そこから自己暗示療法を考案したというエ ピソードがあります。今でいうプラセボ効果ですね。

ここで注目するのが暗示です。クーエは想像力(イメージ)と意志力が争えば、勝つのは必ず想像力のほうだと言っています。彼の論文には、長さ 10m、幅30cmの厚板を地上に置いた場合、その上を歩いていくことは容易いが、人が落ちれば大けがをするほどの高さにこの厚板を置いた場合には、その 上を歩いて渡ることは大変難しくなる例を挙げています。これは、同じ長さと幅の厚板だと頭ではわかっていても、この高さから落ちたら死ぬかもしれないとい う恐怖心を伴った想像力の方が強くなり、緊張で落ちやすくなるためだと説明しています。

このように意志の力で努力しようとすればするほど、負の想像力(イメージ)もより強力になり、その意志の努力とは反対の結果になる「努力逆転の法 則」といわれるものがあり、心理学の世界ではよく知られているそうです。たとえば何かを達成したい(I want to do something.)と願っても、無意識の部分で失敗したらどうしようと
いうマイナスのイメージが強くかかってしまうために、結果的にうまくいかなかったという経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。

クーエはこうした研究の結果から、様々な苦しい局面で、以下のような暗示を繰り返し唱えることを提唱しました。

「私は日に日に、あらゆる面でますます良くなっていく。」(Day by day, in every
day, I am getting better and better.)このプラスのイメージを常に思い浮かべることによって、たとえば病気と闘うことになる場面でも自己治癒力が引き出されてくるというので す。これはとても納得のいくお話でしたので、今回ご紹介してみました。

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2010.03.08

がん友

「がん友」という言葉をご存知でしょうか?
がんと闘っている人、あるいはがんを経験した人同士の友達のことをいうそうです。
私がこの言葉をはじめて聞いたのは、ごく最近のことです。スタッフと何気ない会話の中で「この前Aさんが“がん友”とベトナムへ旅行にいったらしい」とい う話になりました。聞けば学生時代の友人5人で旅行にいったらしく、その中のAさんともう1人ががんを患ったことがあるとのことでした。(正確な使い方か どうかはわかりませんが…)そういえば、同じように昔の友人と旅行に行くといっていた知り合いがいましたが、その方も友人ががん患者だといっていました。 健康だった頃は、年賀状をやりとりするくらいだったのが病気が発覚してからは年に何回かは、短い休暇を利用して国内旅行や台湾や韓国など近場の海外へいく ようになったということです。
「がん友」という言葉をネットで検索してみると、ネット上のブログやコミュニティサイトで、患者どうしが情報交換をしたり励ましあったりということが積極 的に行われています。

メールをする友達=メル友
お母さん同士の友達=ママ友
お酒を飲む友達=飲み友

などさまざまな”○○友”はありますが、まさかがんという病気までがこのように略されて使われているとは知りませんでした。
“がん友”ときくとどこか病気の恐ろしさや重苦しいイメージがうすまり前向きになるような気がします。
この現象は一昔前だったら考えられないことでしょう。なぜなら十数年前は、がんの告知を本人には行わないということが前提だったように思われます。ドラマ などでも「私は本当はがんなんじゃないですか?」というようなセリフをよく耳にされたと思います。しかし、今はインフォームドコンセントという意識が医療 者側に高まり、ありのままを患者に伝え自身で治療法を選択するという流れに変わってきています。それに伴い、患者側の病気の受け止め方も変化してきている のではないかと感じます。周囲の人に自分からがんを公表することも珍しくなくなり、がんを患っているからという意識からか、積極的に会いたい人に会った り、家族や友人と思い出を作ったりする人も増えています。健康な友人としても、友人と過ごす時間が少ないのではないかという不安もあり、会うことや出かけ ることに対して積極的になるようです。
その結果、患者側はからだの自由がきかなくなったときに「あれをやっておけばよかった」と後悔することも少なくなり、残された家族や友人も楽しい思い出と ともに生きることができます。

がんというのは恐ろしい病気ですが、病気を受け止め、受け入れることでその方の人生をより満足のいくものにしていけるということだと思います。もち ろん、そのような人ばかりではありませんが、もし病気が見つかるのが怖いとドックをうけるのに抵抗のある方は、病気とともに生きるという生き方もあるとい うことを少し知って頂きたく、今回のコラムでご紹介しました。

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2010.02.08

アンチエイジングドックの勧め

「上工は未病を治す」という中国の言葉が、「9割の病気は自分で治せる」(岡本 裕著、中経の文庫)の中で紹介されていました。ここで「未病」と は、心身の恒常性が崩れかけている状態で、健康と病気のはざまにあるイエローゾーンを意味します。この時期にこそ、薬に頼る治療ではなく、生活習慣を見直 すことで、自己治癒力をできるだけ高めて、元の健康状態に戻す根本治療を施さなければならないというわけです。しかし、そうは言っても医学的知識のない一 般の方にはさてどうすれば?という素朴な疑問があると思います。そんなときに、適切にアドバイスのできる医者が「上工」と言われる本物の医者だという考え です。

この考え方に沿った健康チェックが、私の施設でお勧めしている「アンチエイジングドック」です。詳細はHP本文 を是非参照して頂きたいですが、

1)身体の重要なパーツである筋肉、血管、ホルモン、骨、脳神経の働きを評価することで、自らの弱点(実年齢よりも老化している)を把握し、食事・ 運動などの生活習慣の改善に向けてのしっかりとした動機付けを行う。

2)この場合、身体の各機能年令をすべて数値化していますので、生活習慣の改善・増悪傾向が、一般の方にも捉えやすく、中・長期的な目標設定を意識 しやすい。

3)自己治癒力の障害因子である、現代社会のなかに潜む「酸化ストレス」や「ストレス全般」の程度、さらにはご自身の「ストレス抵抗力」の数値化、 インデックス化によって、現在の健康状態をより具体的に知ることができる。

などがアンチエイジングドックの大きな特長です。

「彼(病気)を知り、己(自分の体調)を知れば百戦殆からず。」の孫子兵法の言葉は、まさに予防医学にも当てはまる名言だと思いますね。
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2010.01.13

ホットヨガ

少し遅れましたが、新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。

さて、皆様は何かご自身の体にとって良いことをされていますか?私は、最近「ホットヨガ」に少々はまっています。室温を36-37度、湿度を 60-70%という設定条件に完備された狭い部屋で、ヨガの簡単なポーズを取る、ただそれだけのエクササイズなのですが、これは実に医学的にも理に適って いると思うのです。

瞑想的な音楽が流れるなか、まずは呼吸法です。ゆっくりと息を細く長く吐き出すことにより、副交感(リラックス)神経優位となり、精神の安静とと もに筋肉のストレッチ効果を高めます。次に、昨年のコラムでも触れましたが、体温の上昇により、基礎代謝増加作用、血流改善作用、発汗作用さらには免疫賦 活作用が期待できます。その途中さらに後ほどに良質の水分をしっかり摂ることで、デトックス(解毒)効果も抜群というわけです。皆様もぜひ一度体感してみ てください。

また最近読んだ本の中で興味深かったのが、「9割の病気は自分で治せる」(岡本 裕著、中経の文庫)です。そのなかで「自己治癒力」の重要性が強調 されていますが、「ホットヨガ」はそんなところにも役に立つかも知れませんね。また同書には私がカルナ・メドサロンで実践している、信頼できるホームドク ター(かかりつけ医)をもつことが何度も力説されています。このあたりは次回のコラムで改めて触れてみたいと思います。

では皆様もご自身の健康管理に十分留意しながら、この一年を元気に乗り切りましょう。

医療法人 寛友会 寛友会クリニック(カルナ・メドサロン)
院長松下幸司(マツシタコウジ)
〒553-0004大阪府大阪市福島区玉川2-12-24
TEL:06-6444-7788 FAX:06-6444-7733

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2009.12.06

「水」の話

今回は「水」の話です。最近出版された、万病を防ぐ「水」の飲み方・選び方(講談社+α文庫)のなかで藤田紘一郎先生も、「水を制するものは健康を 制す。」と述べられておりますように、健康維持のために、毎日飲む水のことにはぜひ気を配って頂きたいと思います。

まず水のポイントは、酸性水かアルカリ水か、それに軟水か硬水かという2点です。

日本の飲料用水道水は塩素殺菌により、トリハロメタンという発がん物質や活性酸素を多く含む酸性水となっており、日常的に飲む水としては決して勧め られません。それに対して、厚生労働省も機能水(天然水に対し、健康効果を高めるために人工的に作った水)と認めているアルカリイオン水あるいは電解水 は、活性酸素消去作用も強く、新陳代謝も高める効果があり、やはりお勧めです。

次に、硬水と軟水ですが、硬水とは水1リットル中のカルシウム、マグネシウム含量が120mg以上のものをいいます。一方、日本ではこれらのミネラ ル分が少ない軟水が多く、まろやかな美味しい水で、日本食にもよく合うようです。カルシウム、マグネシウムは高血圧や動脈硬化など生活習慣病予防のために 重要で、心身の健康維持のためには、できれば日本人も硬水を飲むようにしたいところではあります。でもどうしても硬水の味が苦手な方も多いでしょう。その ような場合には私は、美味しい軟水を飲みながら、マルチミネラルサプリメント(たとえば、森下仁丹のメガビタEXは一日量でカルシウム182mg、マグネ シウム80mgを含んでいます)を併用する、などの方法をお勧めしています。

いかがでしょうか?

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2009.11.10

体温について

現代人は、体温が以前より低下しているといわれています。最近出版された「体温を上げると健康になる」齋藤真嗣著(サンマーク出版)や「ガンも生活 習慣病も体を温めれば治る!」石原結實著(角川書店)のなかでも、体温が一度下がると免疫力が30%以上低下すると述べられています。逆に、体温をあげる ことで、免疫能アップや生活習慣病になりにくい体質を作ることができることも強調されています。確かにお風呂上りなどに、うっかり寝込んでしまったり、寒 い戸外に出て長時間過ごしたりしたあとに、風邪を引いてしまったという経験は皆さんおありでしょう。まさに体温低下により免疫力が一時的に落ちた結果だと 頷けますね。

そもそも体温の調節には、自律神経系と下垂体-副腎ホルモン系が関与しており、現代人は、慢性的な心身のストレスにより交感神経緊張とストレスホル モン分泌増加が続きがちなため、血流障害や副腎疲労を起こしてしまい、結果的に体温は低下傾向になると考えられています。また最近の過食、運動不足による 肥満は、主な熱産生器官である筋肉量減少を伴っていることが多く、基礎代謝(体温を維持するための生命の営み)を低下させ、やはり低体温となります。

また、がん細胞はやや低い体温(35度)環境下で最も活発に増殖しやすいと言われ、低体温が近年のガン人口の増加の大きな要因ではないかとの紹介本 内での指摘は相当インパクトがありました。

もうひとつの体温に関わる昔からの話題に、発熱時の解熱剤使用の是非があります。医師の間でも今なお賛否両論で、使用反対派は、冒頭の著者らも含 め、体温上昇は免疫力増強の反応であり、解熱剤使用は、免疫システムの足を引っ張る裏切り行為だという立場です。一方、使用賛成派は、高体温による気分不 良や食欲低下、脱水症状により体力(あるいは気力)が消耗してしまうことにより、結果的に自然治癒力を損なうという立場です。まさに体温は古くて新しい テーマといえますね。

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2009.10.14

睡眠について

今回は「睡眠」のお話を少ししたいと思います。

睡眠にはメラトニンという、脳の松果体から分泌されるホルモンが関与します。いくらでも眠れた思春期のころを思い出してみてください。メラトニンは その頃をピークとして、その後、加齢とともに減少してきます。私は、不眠を訴える方には、まずメラトニンサプリメントをお勧めします。メラトニンホルモン は、催眠作用のほか、骨密度増加作用、認知症予防、抗酸化ストレス効果など、さまざまな抗加齢作用を有することが医学会で話題になっています。いわゆる睡 眠薬やアルコールでは、脳を麻痺させて眠りを誘いますので、決して本来の睡眠状態とはいえず、良質な睡眠による以下のような心身への効用を損なうこともわ かっています。

睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠があるというのは聞かれたことがあるでしょう。ノンレム睡眠は深い眠りで、睡眠の主に最初の1-2時間に現れ、心身 の疲労を解消します。そしてこの間に成長ホルモンがたくさん分泌されることがわかっています。一晩寝たあとに、前日の傷口や口内炎、筋肉疲労などが取れて いることを自覚しますよね。これらは、この成長ホルモンが十分働いているからなのです。このとき注意すべきことが一つあります。それは満腹時には成長ホル モンがあまり分泌されないということです。夜遅く食べてすぐに寝てしまうと、肥満の原因のみならず、成長ホルモンによる身体の修復機能も損なうことになり ますので、ぜひ覚えておいてください。

一方、レム睡眠とは、目が素早く動いている(Rapid Eye Movement)特徴から名づけられ、この睡眠中は全身の筋肉の緊張は低下(身体はリラックスしている)しているものの脳の働きは活発化しており、夢を 見たり、前日までの記憶や情報の整理整頓を行っているのです。実は「金縛り」現象も、この時間帯に一致していると言ってしまうと、その神秘性がなくなりま すね。そしてこのレム睡眠帯からの覚醒が、もっともすっきりとした目覚めなのです。

1回の睡眠は、このノンレム睡眠とレム睡眠をほぼ90分周期で繰り返し、最近の書物でも、「4時間半熟睡法」(遠藤拓郎著)などが紹介されていま す。人生の3分の1は睡眠です。秋の夜長、一度じっくりと「睡眠」について思いをはせても良いかもしれませんね。

次回は「体温」について触れてみたいと思っています。

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2009.09.24

心の健康こそが、身体の健康

先日、ある講演会で、筑波大学名誉教授の村上和雄先生のお話を伺う機会がありました。先生は「遺伝子からのメッセージ(朝日文庫)」という本も出さ れております。人間の遺伝子に書き込まれている情報は30億ペアもあるのですが、実際に働いている(スイッチオン状態)のは5(~10)%位だということ です。心の持ちようで、遺伝子はオン状態にも、オフ状態にもなるとのことで、いかに気持ちをイキイキ・ワクワクして過ごすことが隠された優れた才能を持つ 遺伝子を働かせるのに重要かというお話でした。

また最近では「笑い」を科学するということに大変興味をもたれており、1000名の糖尿病患者さんに、昼食を済ませた後、大学教授の糖尿病の講義 を40分間聴いてもらった場合(第1日目)と、ヨシモト漫才を聴いてもらった場合(第2日目)で、それぞれ血糖値を測るという面白い実験をされました。結 果は、第1日目が123mg/dlであったのに対して、第2日目では77mg/dlと、なんと46mg/dlもの差が出たのです。「笑い」という陽気な 心、イキイキした心が、血糖値を下げる遺伝子のスイッチをオンにしたのでしょう。

こうした村上先生の話を伺って、あらゆる病気の原因には、遺伝因子と環境因子があると言われてきましたが、実はこれら二つも互いに密接に関連し あっていて、心の健康こそが、身体の健康(病気予防)にとても重要なのだということを改めて感じたしだいです。皆様もぜひ覚えておいてください。

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